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アルトー・ビーツ ライヴレビュー
怒涛のアルトー・ビーツ日本ツアー~ユミ単体ツアーを終えて無事ロンドンに帰ってきました。

まずはアルトー・ビーツ日本ツアーのこと。
皆様本当にありがとうございました!
私は本当に、今、宇宙一幸せなピアニストです。
まず音楽的に本当にそこにあるべき音楽を皆様にお聴かせする事ができたこと、
バンドとして毎日成長したこと、
自分が音楽に奉仕する存在として成長したことです。





特にリズムの演奏という面においては、毎日ありとあらゆるリズムパターンをつくり、それがクリスのドラミングとのコンビネーションで複雑なポリリズムになったり、すこしずつクリスがテンポをずらせていくのをつられないように我慢してリズムキープをし、最終的にまたテンポを一致させたり、2連と3連を交代で(片方が2連のときもう一方が3連というのをかわるがわるやる)やってる間に2連のほうは7拍子パターンにしたりなど、そういうことが自然に発展していったのは、われわれの自己満足ではなく、それはきっとリスナーが聴きたいことでもあったんだと思うのです。クリス・カトラーというドラマーをタイムキーパーにしてはいけない。彼にはもっと自由になってもらわねばならない。そのためには私は彼が安心できるレベルのタイムキーパーにならなくてはならない。これは本当に大変なことです。雑念が少しでも入るとすぐにつられてしまったり、リズムが崩れてしまいます。いいところを見せようとしてリフを複雑にしたりなんかするとこれまたわけのわからないことになります。
複雑にするには音楽的な必然性がなければならない。いいところを見せるための変化ならばしないほうがよいのです。





この日本ツアーは完全自主ツアーですから、会場の皆様、宣伝を手伝って下さった皆様、フライヤー印刷をしてくださった方、ワークショップのオーガナイズをしてくださった皆様、対バン、共演の皆様、物販を手伝って下さった皆様、それぞれの個人レベルでのご協力がなければ可能ではありませんでした。しかし素晴らしいのはすべてがまさに個人レベルでの協力で行われたことです。





ジェフ、クリス、ジョンは素晴らしい思い出とともに、無事帰国して、私はようやくほっとしたところです。(といってもまだまだ事後処理の業務連絡は続いているのですが)
唯一日本語が話せる人間としてはいろいろとそりゃもう大変なこともありましたが、一緒に旅をして本当に興味深い話をたくさん聞かせてくれました。特にクリスが教えてくれた話からは歌が2つできました。





本当に皆様ありがとうございました。

以下は、近江八幡 サケデリックスペース酒游館でのアルトー・ビーツのライヴにお越しいただいた大阪の佐藤さんの書かれたレヴューです。これを読んだ時、ものすごくわかってもらえた!という気がしました。

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The Artaud Beats @ 酒游館 (6月9日)

昨日からツアーが始まっているバンド、すなわちメンバーは:
Geoff Leigh(electronics,fl)
Chris Cutler(dr)
John Greaves(b.vo)
Yumi Hara Cawkwell(pf,vo)
四分の三がヘンリー・カウ!
厭が応にも期待は高まる。

まず、ユミ・ハラ・コークウェルさんの諸注意というかなんというか。写真はシャッター音ががっつり出なければ撮ってもよく、撮った写真は出来れば送ってほしいなどなど。
で、明かされたのが、本日のみのスペシャルみたいなもので、ジョン・グリーヴスのピアノ弾き語りのソロ・セットを最初に入れる、とのこと。会場にグランドピアノがあること、対バンのない今日は時間に余裕があること、ということで、急遽決まったそうだ。

そんなわけで、ジョン・グリーヴスの登場だ。
かなり変なコード感と、ギターのアルペジオをピアノに置き換えたような妙な演奏に、歌い慣れていないジョン・ケイルみたいな風情の渋い声が乗ってくる。
何というか、ヘンリー・カウの人たちというのは、メロディとかリズムに、ほぼ同じような感性や世界観を共有してるんだなあ、としみじみ思った。現代音楽のようないびつなメロディや、突如強迫的になる展開とか、カウの後のそれぞれの別働隊になるアートベアーズでもカシーバでもキュー・ローンでも、勿論グリーヴスの一連のソロ作でも、どこかにそういう感覚は残っている。そのキモの部分を見せられている感じ。
途中、ジェフ・リーを招いて彼のフルートをサポートに入れた曲もあった。短いセットの最後の曲はピーター・ブレグファドとの共作曲。さすがにちょっと毛色が変わるんだな。言葉がボブ・ディラン風に多めに並んでいく感じとか。

休憩の後、いよいよアルトー・ビーツの登場だ。
完全即興による演奏。
演奏の軸は、みたところカトラーとユミさんの二人という感じ。反応が割とダイレクトに繋がって、ユニゾンやキメが出てきて、全体がそちらに向かっていくような展開が多かった。
カトラーのドラムスは、人柄そのまま、非常に堅くて細かいが、即興でも思いつきでどかどかやる感じがなく、常に抑制が効いたリズムをはき出している。スティックの持ち替えも頻繁にするけど、演奏を止めることがないのは職人技と言えるだろう。
リーはバランスは見つつもかなり自由で、殆どの時間を鍵盤に費やしていて、ノイズを絞り出したりしている。フレーズというよりは某かの「サウンド」。フルートを持つと、濁った音で攪乱したり、PAスピーカーに近づいてフィードバックさせたり、かなり暴れている。
グリーヴスのベイスは、アタックをぼかしたような音色で、低音で自在に埋めていくような感覚。ドラムスとのコンビネーションでリズムセクションに収まる雰囲気はあまりないのだが、ひとたびフレーズが固まると見事に全体を締める役割にも転ずる。
ユミさんのピアノはリズムに転じる場面もあれば、弦を直接弄ってハープのように鳴らす内部演奏もある。他の3人がより「即興演奏」っぽいのに対し、この人は「即興作曲」みたいな感じがする。特に仕込みっぽい構築感があるわけでは無いけれど、流れの中で何かを組み立てているのが明快に伝わってくる。

モーダルな部分と、リズムが硬質に打ち出される部分を行き来するような演奏。モーダルな時は現代音楽とフリージャズの中間のようでもあるけれど、リズムを揃えて走り出すと、そこには「ロック」としかいいようのない疾走が現れる。即興主体であっても、やっぱりこの4人の根源にはロックがあるんだな。そして、その硬質なグルーヴやフレーズの数々は、どうしたってヘンリー・カウを思い起こすものがある。事前に「ヘンリー・カウの曲は演奏しない」という宣言はあったのだけれど、この演奏のノリは確実にカウのそれだ。明確に決まった曲をやっていない、ってことくらいで、演奏の質感や性格には、確かのあのバンドの「伝説」が立ち上がってくるのだ。

ただし、カトラーを除く3人によるヴォイスの存在が、明らかにカウとは違う感覚をもたらしている。何かの言葉を瞬時に詞にしているような場面があって、ここが案外メロディアスだったりする。勿論、一種ホラー映画の音楽みたいな不安感を煽るようないびつなスキャットやスクリームもある。

セットは休憩を挟んでもう一つあって、どろっとしたモーダルさと爆発を対比していたような前半に対し、後半は始終緩やかなリズムが流れていくような演奏だ。メリハリに走らない分、どう転がるか想像できないような中での即興に、バンドのコンビネーションの確かさを感じるものがある。

4人が自在に演奏しつつ、ぎりぎりの部分でちぎれない。
そういうテレパシーのような感覚で満たされた演奏。
確かに明快に作曲された「プログレ」が好きな人にはなじみにくいだろうが、カウのファンならば納得の感動があったに違いない。
なにせ、こういうとんでもなく濃く重い演奏をしつつ、当の本人達が微笑んでさえいる瞬間もある。いかに本人達にとって充実した音楽なのか、厭が応にも伝わってくるのだ。
即興演奏だから、日によって見られるものも違ってくるだろう。13日の神戸のライブも見に行けないかな、と今は思っている。

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本当に皆様ありがとうございました!

アルトー・ビーツYouTube Playlist
by YumiHaraCawkwell | 2012-07-06 03:36 | The Artaud Beats
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