日本ベースの英語フリーペーパー「ジャパンジン」に掲載されるジェフ&ユミのインタビューの抄訳です。
英語全文はこちらをどうぞ。 Geoff Leigh and Yumi Hara By Jonti Davies 息を呑むような美しいアルバム「Upstream(遡行)」発売記念日本ツアーを控えたジェフ・リー&ユミ・ハラに、音楽の経験、リスナー参加、デュオ演奏の極意について聞いてみた。 Japanzine: 日本ではこんなに即興やエキスペリメンタルミュージックが強く支持されているのに、ジェフは今回が初来日と聞いて意外でしたが。 Geoff Leigh: そういった音楽ファンが日本には多いとは聞いているけれども、フランス、オランダ、ドイツなど、会場とミュージシャン双方に公的助成が行われている国に比べるとやはり難しいんじゃないかな。それから、自分は80年代はじめにシーンから消えた、っていうのもあるしね。その頃インプロ/エキスペリメンタルシーン全体が暗く、ネガティヴになっていったのが嫌になって、アフリカやインドのミュージシャンとワールドミュージックを演奏するようになったんだ。それから、90年代初めに運動神経障害を患って、演奏が全くできなくなったんだよ。幸運なことに数年前から症状がすっかり安定して、今は過去30年以上の間に自分が追求してきたすべての音楽が一緒になって、自分の個人的な表現になってきている気がする。 JZ: 即興音楽ワークショップではどのようなことをするのですか? Yumi Hara: 二種類の異なったタイプのワークショップを予定しています。東京(7月4-5日)では、私が今まで何回か行ってきた、世界でも珍しいプログレッシヴロックを基本にしたワークショップです。即興に興味のある方ならばどなたでも大歓迎ですが、東京の参加者はキング・クリムゾン、イエス、ジェネシスなどプログレの完全コピーをしているハイレベルのアマチュアが多いです。こういった参加者に、プログレにおける即興演奏の論理を解説し、コピーでなく、その精神に基づいた自分の演奏を試してみるのに安全な環境を提供するというのは音楽的に非常に意義深いことだと思っているのです。一日目は、前半は私が解説を行い、後半ジェフも入って、参加者とともに実習をします。二日目は私とジェフ、それに参加者が入り乱れて、お客さんの前でライブを行います。参加者にも、お客さんにも、忘れられない経験になると思いますよ。 近江八幡(6月28日)では、昨秋に引き続き、公開ライブパフォーマンスは行なわず、もっと自由な感じのワークショップを行います。自分の楽器でどうやって音を出すかさえわかっていれば、初心者から上級者まで、どんなレベルでもかまいません。参加者の皆さんに、どんな音楽が好きか、このワークショップに何を期待するかなどを話してもらって、そこから実際にどんな方向ですすめていくか、それも即興でワークショップをします。まずジェフと私で短いデモンストレーション演奏をして、直後に演奏中何が起こったか、どういう手法で演奏したか、などの解説をしたあと、参加者と一緒にひとつの音を選んで、それを持続音としてみんなで鳴らしている間に、全員が演奏できるいくつかの音を追加していく、リフを使って即興をする(昨秋はソフトマシーンの「フェイスリフト」のリフを使いました)、音を出している間に他の人の音を聴く練習などをやりながら冒険してみる、などというのが基本的なやりかたですけど、やりたくないことを無理にやってもらうことは絶対ありません。去年の参加者のひとりは、初めてグループで即興をやったけれども、没頭してしまって、あんな経験は生まれて初めて、とコメントしてくれました。 JZ: ジェフ、今ソロやデュオで演奏するのはヘンリー・カウ時代とはずいぶん違うんだろうと想像するのですが... GL: ヘンリー・カウのメンバーであるということは、フルタイムの仕事をもってるみたいなようなもんだったよ。ライブがない日は毎日朝9時半から夜6時まで毎日リハーサル。だからこそあんなに緊密なバンドになったんだろうけどね。一時は自分たちがやってることの全てはリハーサル、食事、睡眠、って感じになっちゃって、健康な生活とは多分言えなかっただろうけど、まあ、結果は出てた、ってわけさ。 JZ: ユミ、ジェフのユニークな楽器(フルート、サックス、チター、エレクトロニックスなど)とどうやって演奏を合わせていってるの? YH: 自分にとって即興演奏とは、リアルタイムで分析、作曲、演奏の一連の作業をする、ってことなんです。インプット-他のミュージシャンのしていることを聴いて、プロセッシング-理解し、アウトプット-反応する、とも言えます。だからジェフの楽器が何であっても、そして私がどの音を選んでも(私はグランドピアノ、アンティークピアノ、マイク・ラトリッジをお手本にしたファズオルガン、スティールギター、などの音を使います)または歌うにしても、集中すること、よく聴くことが基本です。 JZ: デュオで演奏するとき、一緒に合わせようとしますか、それともわざと反対になるようにする? 混沌と音楽的秩序はどこで区別しますか? GL: 確かにメロディ、ハーモニー、リズムの各要素を一般的な意味で「合わせて」聴きやすいものになることはあるけれども、特にフルートとピアノの暖かい、雰囲気のある組み合わせではそうなりやすいんだけど、エレクトロニックスを使ったサックス、ピアノ、声の組み合わせではもっと混沌とした「戦場のような」ものになる可能性を開く。もちろん、それにしても、お互いが何をしているかは意識しあっているのだけれど。混沌と音楽的秩序の区別というのは、演奏者と聴き手の双方の主観であって、ものすごく微妙な線であることが多いと思う。 (実はこのあと私も答えているんですけど、割愛されてました。私の音楽観の基本なので、ここに公開!) YH: 音楽的意図あるところに音楽的秩序あり。意図するものが実現されている演奏が音楽的秩序というものであって、何の考えもなしに演奏してしまっているのでは、どんなにテクニック的に素晴らしかろうと、どんなになじみのあるメロディーをひとつの間違いもなく演奏しようとも、それは混沌なのです。 photo by Séan Kelly
by YumiHaraCawkwell
| 2009-06-02 23:59
| Geoff Leigh & Yumi
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